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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
Read 女心の強ければ (おんなごころのつよければ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,011 characters · 94 screens
別館といっても、実は、便宜上の名目にすぎず、特別な客を時折泊らせるだけで、二階が二室、階下が三室、普通の住宅らしい造りである。松月館主人の妹という、三十歳前の女、表札によると三浦千代乃が、一人で住んでいる。
「わたくし一人で、御不自由でしょうけれど、御用はなんでも仰言って下さい。隣りの百姓家のお上さんも、使い走りをしてくれますから。」
眼を外らさずにじっと見て、てきぱきした語調である。
小鳥が少し囀ずり、蝉が少し鳴き、淋しいくらいの静けさだ。
二階の縁側から、天城山が正面に見える。
西空から差し出てきた積乱雲が、むくむくと脹れ上り、渦巻き黒ずみ、周辺の白銀の一線も消え、引きちぎられたように乱れ流れて、やがて天城山までも蔽いつくすと、一陣の凉風と共に、大粒の雨がさーっと来た。あとはもう天地晦冥、驟雨の中に、雷鳴が四方にこだまし、電光が縦横に走った。それが、いつ止むとも見えなかった。
長谷川は室に寝ころんで、硝子戸越しに外を眺めた。壮快で、頭の中の塵埃まで洗い流される心地であり、しかもうっとりとしてくるのである。
雨よ降り続け。雷よ鳴り続け。
長い時間がたった。