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おんなごころしゅうい

女心拾遺

矢田 津世子

Read 女心拾遺 (おんなごころしゅうい) by 矢田 津世子 (やだつせこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,514 characters · 36 screens

Aozora Bunko

毎日、園子からその話をきかされる横尾氏も、つい、おしものことが心にかかって、出社をしていても、それとなく独身の社員を探すようになる。木村康男といって、本年二十八歳、商業出の俸給六十円、会計課勤務の男と、もうひとり、永年この社の小使いをしている安藤久七という四十男、先年女房に死なれたのでその後釜を欲しがっているという。横尾氏はこの二人を候補者に内定しておいて、万端は園子へまかせてしまった。

今日も、電話口へ呼び出された老夫人は、園子に返辞を強いられて、

「まだ、お父さまへもよく御相談をしてみませんからねえ、あすにでもなったら判っきりした返辞が出来ましょうから……」

と云い渋った。

園子の考えでは若い木村康男へおしもを嫁がせたいのである。老夫人にしても同じことだった。ただ、どういうわけか唐沢氏がそれを渋るのである。

その夜、いつものように炬燵で寛いだ折りに、老夫人は、

「園子から今日も電話がございましてね」

と切り出した。

夕刊に読みふけっている容子の唐沢氏は、

「ああ」

と応えて、遽しく頁をめくった。新聞に顔が隠れていて見えないけれど、不興気な表情がよく分るのである。