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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Read 妖虫 (ようちゅう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 120,290 characters · 239 screens
怪しの者
一同顔を見合わすばかりで、誰も急に物を云うものはなかった。一瞬間死の様な静寂が一座を占領した。
怪しの者
「三笠さん、まさか冗談ではありますまいね。今あんたのおっしゃった言葉は、実に容易ならん事柄ですよ。何か確たる証拠でもあって、そういう事をおっしゃるのですか」
やっとしてから、相川操一氏が、詰問するように云った。
「証拠ですかい。……その証拠を掴む為に、わしは昨日から一睡もせず苦労しておりましたのじゃ。ナニ、証拠などなくっても、わしの推理に間違いはないのだが、犯人が一通りや二通りの奴ではありませんのでね。大事を取って、動きの取れぬ確証を手に入れたという訳です。……守君、すまんが、書生部屋に待っているわしの家来を呼んで下さらんか。ここへトランクを持込む様にね」
何となく老人の旗色がよくなって来たので、守青年はいそいそと指図に従った。やがて、例の黒い大トランクを背負った豪傑書生が、ノコノコと部屋に入って来た。
「それを、ここへ卸すのじゃ」
命令に従って、トランクはドッシリと床の上に据えられた。何が入っているのか、ひどく重そうな鹽梅である。
「妖虫事件がどんなに恐ろしいものであったか、今更わしが云うまでもない事じゃが、併し、諸君はまだ事の表面しか見ておられんのじゃ。