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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Read 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 83,234 characters · 160 screens
その三
人の女を寝取ることにかけては常習犯の彼なのであるが、あの傷々しい、骸骨のように痩せた老翁が、たま/\若い美しい妻を贏ち得て、後生大事にその人に册き、それに満足しきっているらしい様子を見ては、柄にもなく憐愍の情に似たものを感じていた訳であった。
なおついでながら、大納言国経と平中との間には、此の北の方の関係を外にして直接深い交渉はなかったようであるが、或る年の秋、何かちょっとしたことで国経から平中の許へ使者が手紙を持って来た時に、平中が庭に咲いていた菊の一枝を取って返書に添えて渡したことが、平中日記に見えている。その時菊の花を貰った国経は、直ぐに次のような歌を詠んで贈った。
みよを経てふりたる翁杖つきて
花のありかを見るよしもがな
平中の返し、
たまぼこに君し来寄らば浅茅生に
まじれる菊の香はまさりなむ
これはいつ頃のことであったか明かでないが、或は平中は、自分が此の翁の秘蔵の花を手折ったことを考えて、いくらか皮肉にそんな贈物をしたのであろうか。
その三
それからと云うもの、時平は宮中で国経と顔を合わすと、急に如才なく挨拶するようになった。位は下でも、彼には正しく伯父に当る高齢の人を、敬いいたわるのに不思議はないようなものだけれども、菅公を失脚せしめて以来、ひとしお態度が驕慢になって、満廷の朝臣どもに颯爽たる威容を誇ってい