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しょうねんたんていちょう
少年探偵長
海野 十三
Read 少年探偵長 (しょうねんたんていちょう) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 110,286 characters · 221 screens
「うわッ。たまらん」牛丸平太郎は生れつきものおじをしない楽天家であったが、このときばかりは、もう死ぬかもしれないと思った。彼は目がくらんで、呼吸をすることができなくなった。彼は懸命に、両手と両足で、柿の木の枝にしがみついていた。目は、全然ものを見分ける力がなくなった。
「柿の木の上で、目はみえず」
ヘリコプターの音が遠のいていったのが分ったとき、牛丸は、ひとりごとをいった。俳句になるぞと思った。
このとき、ようやくすこしばかり、ものの形が見えるようになった。
「ひどい目にあわせよった」
彼は、そろそろと柿の木から、すべり下りていった。
牛丸少年は、滝の前に、小一時間もうろうろしていた。もうまっくらな中を、あたりを探しまわった。
「おーい。春木君やーい」と、何十ぺんも、友だちの名を呼んでみた。しかしその返事は、彼の耳に聞えなかった。その間に、彼は、倒れていた人のあとへも行ってみた。そこには、血の跡らしいものが黒ずんで地面を染めているのを見た。
「誰だろう、ここに倒れていた人は」
彼には事情が分らなかった。
ヘリコプターで救助作業をやったのかもしれないが、しかしその前に、はげしい銃声のようなものを聞いた。