Japanese reading practice

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やまでらのかい

山寺の怪

田中 貢太郎

Read 山寺の怪 (やまでらのかい) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,147 characters · 13 screens

Aozora Bunko

「おい兄弟、旦那が載ってくださると云うぜ」

「そいつはありがたいや」

籠舁は肩をかえて呼吸杖を持ちなおした。武士は傍に寄ってそれに乗ろうとして、見るともなしに前にいる籠舁の顔を見た。鼻の赤い恐そうなその籠舁の左の眼も潰れていた。武士はもしやと思って後の籠舁の顔を見た。その籠舁の左の眼も潰れていた。武士はまたびっくりしたが弱味を見せてはいけないと思ったので、強いて傲然として籠に乗った。

「おかしな奴ばかりだな」

すると後の籠舁が云った。

「旦那、わっしだちゃ、近道を往きます、眼を開けていると気もちが悪うございますから、ちょっと眼をつむってておくんなさい」

武士は怪しいそぶりがあれば打ち放そうと思った。

「そうか、つむっていよう」

前の籠舁が云った。

「ようがすかい、眼の二つある者は、あっちかこっちかに迷いますからね」

武士は傲然として云った。

「そんなことはどうでもよろしい、早くやれ」

後の籠舁がだめをおした。

「それじゃ旦那、開けろと云うまでは、つむってておくんなさいよ、あけちゃだめですぜ」

「よろしい」

同時に籠は地を離れた。籠舁の掛声とともに武士は眼をつむって用心していた。