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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Read 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) by 小島 烏水 (こじまうすい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,795 characters · 274 screens
ところに足を踏んがけ、雪と壁の溝に身を平ったく寄せて、雪から遁れると、そこに大崩石の路が、一筋の岩壁を境目にして、二分して谷にずり込んでいる、私は左を取って、ゴート(岩石の磊落崩壊している路をいう)へとかかった。
このゴート路の長さだけでも、一里あるというが、梓川の谷までは、直線に下っても、二里半はあろう、前後左右の絶壁からは、岩石が瓦落瓦落となだれ落ちて、路は錐のように切截された三角石や、刺だらけのひいらぎ石に、ふだんの山洪水が、すさまじく押し出した石滝が、乗っかけて、見わたす限り、針の山に剣の阪で、河原蓬の寸青が、ぼやぼやと点じているばかりだ。
ゴート路を下り切ると、ダケカンバなどの、雑木林になって、雨水で凹んだ路が、草むらの中に入り乱れている、時々大石に蹴躓いては、爪を痛める、熊笹が人より高くなって、掻き分けて行くと、刎ねかえりざまに顔をぴしゃりと打つ、笹のざわつくたびに、焼岳の降灰がぷーんと舞いあがるので、顔も、喉も、手も、米の粉でも塗ったようにザラザラとなる、その上に、剛い笹ッ葉で、手足が生傷だらけになって梓川の本谷――それは登る