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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Read 山彦乙女 (やまびこおとめ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,360 characters · 251 screens

Aozora Bunko

心志相反

一

心志相反

一

一日延ばしに延ばしていた、谷町訪問を、半之助はついに、はたさなければならなくなった。

母にせがまれたばかりでなく、役替えが定ったのと、それを知ったのだろう、冲左衛門から、呼びだしの使いが、来たのである。

――要談の半分は済んだ、半之助はこう思った。

これまでの冲左衛門なら、当然ずかずか押しかけて来る筈だ。使いをよこすというのは、こちらの事情が或る程度わかり、それについて、きげんを損じている、という意志表示であるとも、考えることができる。

――多少は不愉快なことも云われるだろうが、そのほうがはっきり片がついていい。彼はこう肚をきめた。

「縁談のことはなるべく避けて下さいね」出がけに母が云った、「お断わりするにしても、もう少し経って、折をみてからになさらないと」

「なるべくそうします」半之助は供をつれずに出た。

それは七日続きの休暇の、第一日に当り、午後から山村座の茶屋で、なかまと会う約束になっていた。それでまず、すぐ近くの、赤坂新町にある、青山の家を訪ね、都合がよかったら、少し早めに木挽町へ来るように、云った。

「谷町の話はすぐ済むだろうと思う、出なおすのも面倒だし、そのままゆくからね、できたら早く来て呉れないか」