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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
Read 幕末維新懐古談 (ばくまついしんかいこだん) by 高村 光雲 (たかむらこううん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,524 characters · 6 screens
これから火事の話をします。
前に幾度かいった通り、慶応元年丑年十二月十四日の夜の四ツ時(私の十四の時)火事は浅草三軒町から出ました。
前述詳しく雷門を中心とした浅草一円の地理を話して置いたから大体見当は着くことではあるがこの三軒町は東本願寺寄りで、浅草の大通りからいえば、裏通りになっており、町並みは田原町、仲町、それから三軒町、……堀田原、森下となる。見当からいうと、百助の横丁を西に突き当った所が三軒町で、其所に三島神社があるが、その近所に襤褸屋があって、火はこれから揚がったのだ。
その夜は北風の恐ろしく甚い晩であった。歳の暮に差し掛かっているので、町内々々でも火の用心をしていたことであろうが、四ツ時という頃おい、ジャン/\/\/\という消魂しい※り半鐘の音が起った。「そりゃ、火事だ、火事だ」というので、出て見ますと、火光は三軒町に当っている。通りからいえば広小路の区域が門跡寄りに移る際の目貫な点から西に当る。乾き切った天気へこの北風、大事にならねば好いがと、人々は心配をしている間もあらばこそ、火は真直に堀田原、森下の方向へ延びて焼き払って行く。