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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
Read 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) by 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,548 characters · 161 screens
を鳴らすような時もあり、ギャオと欠びをするような時もある。
十一
私は元来動物好きで、就中犬は大好だから、近所の犬は大抵馴染だ。けれども、此様繊細い可愛げな声で啼くのは一疋も無い筈だから、不思議に思って、窃と夜着の中から首を出すと、
「如何したの? 寝られないのかえ?」
と、母が寝反りを打って此方を向いた。私は此返答は差措いて、
「あれは白じゃないねえ、阿母さん? 最と小さい狗の声だねえ? 如何したんだろう?」
「棄狗さ。」
「棄狗ッて何?」
「棄狗ッて……誰かが棄てッたのさ。」
私はしばらく考えて、
「誰が棄てッたンだろう?」
「大方何処かの……何処かの人さ。」
何処かの人が狗を棄てッたと、私は二三度反覆して見たが、分らない。
「如何して棄てッたんだろう?」
蒼蠅よ、などという母ではない。何処迄も相手になって、其意味を説明して呉れて、もう晩いから黙ってお寐と優しく言って、又彼方向いて了った。
私も亦夜着を被った。狗は門前を去ったのか、啼声が稍遠くなるに随れて、父の鼾が又蒼蠅く耳に附く。寝られぬ儘に、私は夜着の中で今聴いた母の説明を反覆し反覆し味って見た。