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へいぼん

平凡・私は懐疑派だ

二葉亭 四迷

Read 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) by 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,548 characters · 161 screens

Aozora Bunko

で、親子一つ事を反覆すばかりで何日経っても話の纏まらぬ中に、同窓の何某はもう二三日前に上京したし、何某は此月末に上京するという話も聞く。私は気が気でないから、眼の色を異えて、父に逼り、果は血気に任せて、口惜し紛れに、金がないと言われるけれど、地面を売れば如何にかなりそうなものだ、それとも私の将来よりも地面の方が大事なら、学資は出して貰わんでも好い、旅費だけ都合して貰いたい、私は其で上京して苦学生になると、突飛な事を言い出せば、父は其様な事には同意が出来ぬという、それは圧制だ、いや聞分ないというものだと、親子顔を赤めて角芽立つ側で、母がおろおろするという騒ぎ。

其時私の為には頗る都合の好い事があった。私と同期の卒業生で父も懇意にする去る家の息子が、何処のも同じ様に東京行きを望んで、親に拒まれて、自暴を起し、或夜窃に有金を偸出して東京へ出奔すると、続いて二人程其真似をする者が出たので、同じ様な息子を持った諸方の親々の大恐慌となった。父も此一件から急に我を折って、彼方此方の親類を駈廻った結果、金の工面が漸く出来て、最初は甚く行悩んだ私の遊学の願も、存外難なく聴されて、遂に上京する事になった時の嬉しさは今に忘れぬ。