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ねんじゅうぎょうじおぼえがき

年中行事覚書

柳田 国男

Read 年中行事覚書 (ねんじゅうぎょうじおぼえがき) by 柳田 国男 (やなぎたくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 135,005 characters · 262 screens

Aozora Bunko

今までの学者の解釈によると、鶺鴒はよく馬屋の口へ遊びに来る鳥である故に、中国では馬櫪神という馬の保護神の像の片端に、この小鳥を描くものがあった。それを採用したものだろうということで、私もそうかも知れないと思っている。

猿も日本を始めとし、東アジアの諸民族の間において、馬の災いを防ぐ力のある動物と考えられ、初春には厩の前で猿を舞わし、または厩の柱に猿を繋いでおく風習が広く行われていた。すなわち庚申はその猿の日だから、この日祭をする神は馬の安全を守りたまうべしと、考え始めたのが元だったかとも見られるのである。鶏は素より夜明けを報ずるめでたい鳥であったけれども、これを庚申さんの傍らに持って来るのには、何かまた特別のわけがなくてはならない。私の想像では、これは猿の日の翌日が鶏の日だから、一方を重んずれば自然にこれも出て来る。つまりは祭がこの二つの動物の日を連ねて、徹夜に行われることを意味するかと思う。

アマノジャクという醜い怪物は、今では天邪鬼などと字に書いているが、九州の方へ行くとアマノシャグメという人が多い。書紀や万葉集のような古い書物に、天之探女と出ているのも同じもので、これを意地悪で悪戯好きで、いつも人間のいやがるような事をする魔物であったように、今でも古い人たちは言い伝え、または話の種にしている。