Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

びしょう

微笑

横光 利一

Read 微笑 (びしょう) by 横光 利一 (よこみつりいち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 24,911 characters · 50 screens

Aozora Bunko

断乎とした彼の即決で、句会はそのまま続行された。高田の披講で一座の作句が読みあげられていくに随い、梶と高田の二作がしばらく高点を競りあいつつ、しだいにまた高田が乗り越えて会は終った。丘を下っていくものが半数で、栖方と親しい後の半数の残った者の夕食となったが、忍び足の憲兵はまだ垣の外を廻っていた。酒が出て座がくつろぎかかったころ、栖方は梶に、

「この人はいつかお話した伊豆さんです。僕の一番お世話になっている人です。」

と紹介した。

労働服の無口で堅固な伊豆に梶は礼をのべる気持になった。栖方は酒を注ぐ手伝いの知人の娘に軽い冗談を云ったとき、親しい応酬をしながらも、娘は二十一歳の博士の栖方の前では顔を赧らめ、立居に落ち付きを無くしていた。いつも両腕を組んだ主宰者の技師は、静かな額に徳望のある気品を湛えていて、ひとり和やかに沈む癖があった。

東京からの客は少量の酒でも廻りが早かった。額の染った高田は仰向きに倒れて空を仰いだときだった。灯をつけた低空飛行の水上機が一機、丘すれすれに爆音をたてて舞って来た。

「おい、栖方の光線、あいつなら落せるかい。」と高田は手枕のまま栖方の方を見て云った。