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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Read 怪しの館 短編 (あやしのやかた) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,915 characters · 165 screens
あせった島子の声がした。
「あなたは見ることが出来ましょう! 私の肌を!」
だがまた呻くように琢磨がいった。
「後二分だ! 後二分だ」
同じく呻くように島子がいう。
「ご覧なさりませ! ご覧なさりませ! 白い私を! 真っ白い私を!」
「後一分!」
「素裸体の私!」
だが、その時音がした。
十二時を報ずる時計の音!
同時に庭から声がした。声というより悲鳴であった。しかも断末魔の悲鳴であった。しかも二人の悲鳴であった。
同時に寝台からも声がした。これもやっぱり悲鳴であった。やはり断末魔の悲鳴であった。
ギーッ! 音だ! ドアが開いた。
「あなた!」
「娘か!」
「いいえ葉末!」
「葉末というのか?」
「あなたの花嫁!」
ひらかれたドアから現われたのは、花嫁姿の葉末であった。
「おいで!」
と琢磨、手をひろげた。
で、葉末と三蔵琢磨、はじめてやさしく抱擁した。
その時壁からヒラヒラと、床の上へ落ちたものがある。
四ヵ条を記した張り紙である。
風かないしは幽霊の手か? どっちかがその紙を壁から放し、床の上へ落としたに相違ない。
十三
「何んでもなかったのでございますよ。