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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
Read 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,963 characters · 26 screens
その中を巧く抜き取ったのじゃ。拙老が三増峠で介抱した老人も、石見守が腹心の一人じゃった。そこで隠した場所は、一々石見守が地図に書き入れ、目じるしの岩石、或は立木、谷川、道筋、神社、道標、それより何歩、どの方角にと、そういう風に委しく記したのを、正副二枚だけ拵え上げ、腹心の皆々立会の上、正の地図を石見守が取り、副の地図を人数だけに切放し、銘々その一片宛に所持する事にして、万一石見守不慮の死を遂げた場合に、その切図を皆々持寄り、元の如く継ぎ合せて、隠し場所を見出すという仕掛けじゃ。一人一人、自分の隠した処を知っていても、他の者の処は知らぬので、左様に取極めたのは石見守の智慧じゃ。そうして切図は薄い油紙に包み、銘々印籠の二重底に隠し置くという、これもその時の申合せじゃ。そうして置いて陰険な石見守は、腹心の者を一人ずつ、毒殺、或は暗殺など致して退けた。三増峠の老人は、中途で、それを覚ったので、慌だしく九州路に逃げ延びて、命だけは取留めていたという」
「その石見守は疾くに死去なされました筈」
「おう、慶長十八年四月に頓死したが、本多上野介正純が石見守に陰謀が有ったと睨んで、直ちに闕所に致し置き、妾を詮議して白状させ、その寝所の下を調べさしたところが、二重の石の唐櫃が出て、その中に又黒塗の箱が有り、それには武田家の定紋