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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Read 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) by 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,735 characters · 290 screens
「敬二郎の野郎は正勝さんに一緒に馬車に乗られたんで、妬いているに相違ねえべぞ」
だれかが言った。
「腹が煮え繰り返るってやつだべさ」
笑いながら、まただれかが言った。
「それで、お嬢さまはどっちが好きなのかな?」
「そりゃあお嬢さまにしてみりゃあ、敬二郎さんがいいにちげえねえさ。敬二郎さんと正勝さんとじゃ、鶴と鶏とぐれえ違うじゃねえか? そりゃあ敬二郎さんのほうがいいにちげえねえ」
「でも正勝さんの話じゃ、正勝さんを好いているらしいんだがなあ。今度も敬二郎さんのほうへは音沙汰をしないで、正勝さんにだけ手紙を寄越したり、電報を寄越したりしたらしいんだが……」
吾助爺は目を擦りながら、ぼそぼそと言った。
「そりゃあお嬢さまにしてみれば、自分が正勝さんの妹を殺したんで、申し訳がねえように思っているんだろう。それで、正勝さんにだって悪い顔はできねえのさ」
「しかし、顔や姿は敬二郎さんのほうが立派かもしれねえが、人間の出来からいったら正勝さんのほうが上じゃねえかなあ?」
「どっちにしても、おれらのためにゃあ正勝さんだよ。いくら姿ばかり立派でも、敬二郎の野郎じゃ糞の役にも立たねえから」