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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
Read 恨なき殺人 (うらみなきさつじん) by 宮島 資夫 (みやじますけお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,611 characters · 56 screens
「高田の坑夫を一人も帰すなあ」と怒鳴ったが、その時二人はもう取り囲まれてしまっていたのであった。そして最初に進んで来た大きな男が、
「この金掘め」と怒鳴ると、匕首を抜いて切ってかかった。さらしの腹巻の上に袢天一枚を被った三田も、ふところから短刀を出すと同じく抜いて身構えた。
暗の中にも刃物の光りがキラッとしたので、周りを取り巻いていた者は、パッと遠く離れてしまった。
けれども二人は、森の木を楯にして、容易に切ろうとはしなかった。
其時松田は、自分の友子がこうして切り合って、怪我でもさせれば、山に帰って申訳が立たないと思った。ただそれ丈けで、他に何を考える暇も、もうなかった。彼は匕首を抜いて、暗い中を相手の後ろにそうっと廻った。前に計り気を取られている男の腹にうんとかじり附くと、素早く短刀を傍腹に突き通した。
「奴はウンって言いましたっけ」と言いながら、松田は腹掛けの丼から匕首を出して、
「赤沢にいた時分、鍛冶屋に打って貰ったんだけど、馬鹿によく切れますよ」と抜いて見せた。短かい刃渡りの中ほどがふくらんだ半月形の刃物は人の血と膏で、まだ薄く曇っていた。
その匕首が柄際までズブッと通ってしまったので、抜こうと思ってもなかなか抜けなかった。