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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
Read 悪獣篇 (あくじゅうへん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,715 characters · 73 screens
お婆さん、何と奇特な事ではないかの。」
「御奇特でござるのう。」
「じゃでの、何の心願というでもないが、何かしるしをといわるるで思いついた、お地蔵一体建立をといわっしゃる。
折から夏休みにの、お邸中が浜の別荘へ来てじゃに就いて、その先生様も見えられたが、この川添の小橋の際のの、蘆の中へ立てさっしゃる事になって、今日はや奥さまがの、この切通しの崖を越えて、二つ目の浜の石屋が方へ行かれたげじゃ。
のう、先生様は先生様、また難有いお方として、浄財を喜捨なされます、その奥様の事いの。
少い身そらに、御奇特な、たとえ御自分の心からではないとして、その先生様の思召に嬉し喜んで従わせえましたのが、はや菩薩の御弟子でましますぞいの。
七歳の竜女とやらじゃ。
結縁しょう。年をとると気忙しゅうて、片時もこうしてはおられぬわいの、はやくその美しいお姿を拝もうと思うての。それで、はい、お婆さん、えッちらえッちら出て来たのじゃ。」
「おう、されば、これから二つ目へおざるかや。」
「さればいの、行くわいの。」
「ござれござれ。私も店をかたづけたら、路ばたへ出て、その奥様の、帰らしゃますお顔を拝もうぞいの。