Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
Read 悲しい誤解 (かなしいごかい) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,139 characters · 23 screens
やきいも、やきいもだ。今日の弁当はお汁は出ませんよ、と妻は言ったが、何がお惣菜にはいっていることやら。古ぼけたその鞄だって、勤め人の体裁に持ってるだけで、大したものは中にはいっていなかった。
愚にもつかない事柄だが、思いようではしみじみと身にしみる、それらのことが、私の憂欝の始まりだった。この種の憂欝に沈みこみ、重い頭を強いてもたげて、おずおずと眺めると、人の世が憐れに見え、人間の姿が憐れに見える。なにか重い荷を背負い、なにか重い鏈を引きずって、とぼとぼと歩いている、そうした感じが、我にも他人にも、誰にも、相通ずる。これを称して、ヒューメンな感情だなどと文学者は言うが、一介のサラリーマンにとっては、ヒューメンな感情ほど惨めなものはない。体力の消耗の故であろうか。精神力の消耗の故であろうか。
身動きも出来ないほど込み合った電車で疲れ、会社の事務でまた疲れた。算用数字がやたらに並んでる紙片を、分類し系統立てて、書記の方へ回すのである。書記は黙々と謄写している。カーボン紙のインクがにじめば主任に叱られるので、ペン先きを機械のように動かしている。衝立の向うからは、タイプの音が断続的に聞えてくる。