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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Read 我が家の楽園 (わがやのらくえん) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 90,195 characters · 175 screens
百々子が玄関まで出迎え、千々子さまのサロンにご案内する。二人だけでつもる話を三十分か、それくらい……いいころに、賢夫人が挨拶に行く。洋館へお移りねがって、そこで千々子さまが、石田氏、五十雄君、百々子の順で家族を紹介する。シュラー氏は我儘な金持の一人で、うるさいことは嫌いだそうだから、あらたまった会食などはしない。それから……どうなるか、誰も知らない。シュラー氏と千々子さまの間できめられることで、他人にはプランのたてようがない。
なにしろ、おめでたい。一分も早くシュラー氏がやってきて、噛みつくなり、蹴合うなり、思いようにやってくれと、五十雄君と二人でそんなことをいっているとき、メードさんが、藪のそばの花の中に、赤ん坊が捨ててあるといいにきた。
いつかの小火のあった晩も、藪のなかに赤ん坊が捨ててあった。この辺の地形は、捨子をしたくなるようにできているのかもしれない。
行ってみると、陽のぬくみがこもって、むっとするようなマリゴールドの花間に、お風呂の脱衣籠に入れた、十ヵ月ぐらいの赤ん坊が、白ネルの着物にくるまり、無心に空を見あげながら、眼をぱちくりさせている。