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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Read 我が家の楽園 (わがやのらくえん) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 90,195 characters · 175 screens
「あなたを呼んでいるんでしょう。早く、お出になったらどうです」
といって奥へ入った。代りあって、石田氏が出てきた。
「おいおい、ここは公園じゃないんだから、勝手な真似をしてもらっちゃ、困るね」
芝生の上は、ちょっとの間、しずかになったが、石田氏のほうを尻目で見ながら、すぐまた、ガヤガヤいいだした。
「チョビ髯を、はやしてやがら。シケた野郎だな。あんなコック、いつ来たんだ?」
コックという一言は、石田氏にとって、よほど心外なものだったらしい。ギクシャクと頬をひきつらせながら、女達のほうを睨みつけていたが、
「出て行かないと、SPを呼ぶぞ」
と、むやみな声で怒鳴りつけた。
大将らしいブルトン帽の女は、煙草を横銜えにしたまま、石田氏のほうを見ていたが、ポイと芝生に煙草を投げだすと、ショルダー・バッグを揺りあげながら、のっそりと立ちあがった。
「話を聞きに行こう」
女達は、その声にひきあげられるように、一斉に立ちあがると、大将を先頭にして、ゾロゾロと石田氏のほうへやってきた。
大将は、両足をうんと踏みひらいて、腰骨のところへ手をあて、ひんがら眼で石田氏を見あげながら、裏枯れ声でいった。