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せんそうはぼくをおとなにした
戦争はぼくをおとなにした
小川 未明
Read 戦争はぼくをおとなにした (せんそうはぼくをおとなにした) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,627 characters · 11 screens
まだ、ひる前で、あまり人通りのない時分でした。道の片がわに一軒の染め物店がありました。表へ面した、ガラスのはまった飾り窓には、若い女の人がきるような、はでな反物がかかっていました。それだけでも、通る人々の足をとめて、目をひくに十分といえますが、もう一つ、この窓の内へ、セルロイド製の、大きなはだかのキューピーがかざられて、いっそうの注意をひきました。キューピーのからだの色は、うす赤く、二つの目は、まるくまっ黒でした。この健康そうな赤ん坊ほどもある人形は、そのひょうきんな顔つきでは、いまにも、足音におどろいて、目をくるくるさし、通りかかる人になにか悪口をいって、いたずらをしかねまじきふうに見えました。つい無心できかかる人まで、その笑いにつりこまれるくらいだから、わんぱくざかりの子どもらが、なんでこれを見て、なんともいわぬはずがありましょう。
いずれは、この近所の子どもたちでした。ふたりづれの男の子が、どこからか往来へ出てきました。どちらも六つか、七つぐらいです。キューピーに目をとめると、たちまち窓のそばへ寄ってきました。
なんと思ったか、ひとりの子は、いきなり両足をひらいて、大きな目をいからし、キューピーのまねをして、人形とにらめっこをしました。