Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おうぎの
扇野
山本 周五郎
Read 扇野 (おうぎの) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,727 characters · 67 screens
ああと栄三郎は盃を置いた。
――不義者。
あのとき二人の酔った侍は「不義者」と云っていた。なにが不義者かと思ったが、その意味がいま彼にもわかるようであった。
「そこで孝之介は怒って」とおけいは続けた、「――まず先生の絵の邪魔をするために競作ということを企み、それをおつるさんに云ったんですって、おつるさんは先生のことを心配して、自分は身をひこうと思ったんだけれど、やっぱり逢わずにはいられない、悪い悪いと思いながら逢っているうちに、孝之介のほうはますます執念ぶかくなって、おまえが飽くまでいやだというなら、家老の職権で古渓先生の絵をはねてしまう、もうその手順をつけているんだなんて威かしたんです」
「それで、それでおつるは承知したのか」
「自分さえ死んだ気になればいいんだって、とうとう落籍されることになったんですわ」
「おつるがそう云ったんだな」
「おつるさんがそう云いました」とおけいはそっと眼をふせた、「――おとついお稽古の帰りに、泣きながらすっかり話してくれたんです」
「古風なやつだ」栄三郎は首を振った、「そんな手で女を口説きおとす石川も古風だが、そんな手に負けて自分をころすおつるもあんまり古風すぎる、ばかなやつだ」