Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
どうきゅうしつのしちにん
撞球室の七人
橋本 五郎
Read 撞球室の七人 (どうきゅうしつのしちにん) by 橋本 五郎 (はしもとごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,589 characters · 12 screens
「ちょっと。どうかしましたか?」
そう云う別の台の、跪んでいる黒子の男の身体が邪魔になる法被姿の若い者の声と、
「どうぞ、こちらさん無かったのです」
そのゲーム取りの促す声とが二度聞えた。それでも返事がなかったので、それまで尻で物を言っていた別の台の法被が、先ず黒子の男をのぞき込んだ。私も不審な気がしたのでたって行って見た。ちょっとの間、室の中が何とはなしにしーんとした。
黒子の男が殺られていたのは台と台との間である。
「や、これは?」
とその法被が、パタンとキューを打ちなげて、黒子の男を後ろから抱き起した時は、もうそれは一個のむくろとなっていて、でも左の胸の、恰度心臓と覚しいあたりからは、こんこんと真赤な物が吹き出していた。
もじりの上から只一突きに、何か細身の短刀様の物でやられたらしい。素人の私にそれが解った程、その血の有様はハッキリしていた。
「位置を動かしちゃいけないいけない。誰か直ぐ交番へ。いやお君ちゃん、君が行ってくれるのが一番いい」
四人で撞いていた方の、会社員らしいワイシャツの青年が云った。
ゲーム取りは、顔色を変えて、それでももう入口の下駄箱から、キルクの草履を取り出していた。