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ぎたい

擬体

豊島 与志雄

Read 擬体 (ぎたい) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,945 characters · 25 screens

Aozora Bunko

」

青木に声をかけて、それから室内を一通り見廻した。

「宮崎君、君はもう帰ってよろしい。」

宮崎は直立不動の姿勢をした。

青木は石村について社長室にはいった。

中央の大きな円卓をかこんで、長椅子や安楽椅子が並んでおり、壁には大小数枚の油絵があった。卓上には、ウイスキーの瓶や水差やピーナツが出ていた。石村が来客と一杯やっていたものらしい。

「さあ掛け給い。」

石村は青木に安楽椅子を指し示し、自分は長椅子にかけようとしたが、ちょっと小首を傾げて、事務室のとは別な扉を開けて出て行き、ウイスキーの新たな瓶を持って来た。そこの室には、女秘書の小島がいる筈だったが、それももう帰って行ったらしかった。この女秘書は、石村を直接訪れて来る客を取次いだり、茶を出したり、タイプライターを叩いたりする役目だ。石村はタイプの文書が好きで、それを叩く音がこの室にはのべつにしていた。

青木は石村と全く二人きりなのを知り、石村の応対が懇切なのを見て、これはいつもと違った用件だと悟った。

「引止めて、迷惑じゃなかったかね。」

「いえ別に……。どうせ酒を飲むぐらいな用しかないんですから。」