Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ほうろうさっかのぼうけん
放浪作家の冒険
西尾 正
Read 放浪作家の冒険 (ほうろうさっかのぼうけん) by 西尾 正 (にしおただし) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,694 characters · 33 screens
そういえば部屋の模様もなんとなくへんだ。妙に古めかしい壁かけがさがっていたり、王朝ふうの蒼味をおびた椅子や花瓶がおいてあったりして、――などと、ばくぜんとこんなことを考えているうちに、自分がいま、いかにけんのんな状態にいるかに気がついた。こうしちゃあおられぬ。まごまごしているととんでもないとばっちりをくわねばならぬ。ながいは無用と腰をあげたとたん、部屋のすみからとつぜん男の陰気なバスがこういった。
「そうだ、もっとしめろ、もっともっと」
室内にはもうひとりの別人物がいたのだ。と同時に、それまでからくもささえられていたななめのドアが、身動きのために、かすかではあったが、――ことん……と音をたてて、五分以上もただしい位置にあいてしまった。しまったとばかり、ぴたりと息をころすと、それまでまばゆいくらいに煌々とかがやいていた電燈が、――ぱちいん……という暗示的なスウィッチの音とともに、まっくらになった。とりもなおさず、やつらはおれの隙見にかんづいたのだ。さあこまった、一刻もゆうよはしていられぬ。たんなる隙見だけでも、こういう家の風習として極端にいやがり、半ごろしにするくらいだから、おそるべき秘密をしられたやつらは、うむをいわせずおれの首にも魔手をのばしてくるに相違ない。