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ほうろう
放浪
織田 作之助
Read 放浪 (ほうろう) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,614 characters · 47 screens
しかし、此の生徒はエスプリというような言葉を心得ていて、美津子は得るところ少くなかった。3√と封をした手紙をやりとりし、美津子の胸のふくらみが急に目立って来たと順平にも判った。うか/\と夜歩きを美津子はして、某生徒に胸を押えられ、ガタ/\醜悪に震えた。生国魂神社境内の夜の空気にカチ/\と歯の音が冴えるのであった。やがて、思いが余って、捨てられたらいやゝしと美津子は乾燥した声でいい、捨てられた。
日が経ち、妊娠していると親にも判った。女学校の卒業式をもう済ませていることで、両親は赤新聞の種にならないで良かったと安堵した。ある夜更け美津子の寝室の前に佇んでいたといわれて、嫌疑は順平にかゝった。順平は何故か否定する気にもならなかったが、しかし、美津子を見る目が恨みを呑んだ。雨の夜、ふら/\と美津子の寝顔に近づいたが、やはり無謀だった。美津子の眼は白く冴えて、怖ろしく、狂暴な血が一度にひいた。
丸亀夫婦は美津子から相手は順平でないと告げられると、あわてゝ、頗る改って順平を長火鉢の前へ呼び寄せ、不束な娘やけど、貰ってくれといった。順平はハッと両手をついて、ありがとうございますと、かねてこの事あるを予期していた如き挨拶であった。