Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Read 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 177,454 characters · 357 screens
二
母親は門前に立って笏梧朗を顧みた。笏は、瞳を凝らして地面を見つめていたが、其処に童子のらしい小さい足跡が、やや濡れ湿って印せられてあった。
「ご覧、こんなに沢山な虫だ。」
笏はそう言って、足跡に蝟集まっているうじうじしている馬陸を指さした。――馬陸は、足跡の輪廓の湿りを縫いながら、蠢乎として或る異臭を食みながら群れていた。母親の心には、優しい子息の足跡を舐める、この肌痒い虫が気味悪かった。
「にくらしい馬陸。」
母親がその足の下で踏みにじろうとすると、笏はにわかに止めた。古い話によると、亡きものの尋ねてきた足跡を踏むものではない。それはそのままにして置くものだという風に言葉を挿し入れた。
二人は、黙って対い合っていた。――そして馬陸は、靴針のように童子の足跡を辿って、幾重にも縫糸をかがって倦くことを知らなかった。
二
笏は、夕刻にはそのふしぎな暗い森の中の家のまわりを、何か恋慕うもののあるようにうろついていた。森と言っても崖ぎしの家に過ぎない、ただ非常に古い榎と椎とが屋根を覆うていて、おりおり路上に鷺の白い糞を見るだけであった。
そこなら七八歳ばかりの子供が、出たり入ったりして、笏は、その子供の顔を見に出掛けるのだった。