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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 190,406 characters · 381 screens
「はてな? この五月の中旬頃には、義龍どの御病死と聞えて、動揺めいたことがあったが」
「こんどは、どうやら真実らしい。いずれにいたせ、御当家にとっては、君公の舅君にあたる道三山城守様をば、前に討ち殺した義龍どのだ。人倫の上からも、倶に天を戴かざる舅君の仇ではあるし、中原へ展びんとするには、どうしても足場とせねばならぬ美濃だ。展びまいとしてもそこへ展びずにいない尾張との宿命だ」
「近いなあ、その日も」
「近いどころか、はやくも今宵からは、木曾川へ向って発つのだ」
「いや、まだまだ。君公には御出陣なさるまい」
「柴田どのの監軍、佐久間どの御指揮の下とあれば、信長様には御出馬ないとみえる」
「たとえ義龍どの亡く、その嫡子龍興どのも暗愚とはいえ、美濃の三人衆といわるる安藤伊賀守、稲葉伊予守、氏家常陸介らがあり、また、主家を去って今は栗原山の閑居に隠れおるとは申せ、竹中半兵衛重治のごとき人物もおるうちは、そう易々と参るまい」
「半兵衛重治?」
犬千代は、小首かしげた。
「三人衆の名は疾く隣国へもひびいているが、竹中半兵衛とやら、そんなに人物か」
「いや、人は知らず、わしだけは密かに心服しておるのだ」