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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 197,228 characters · 394 screens
よろしくお取次ありたい」
と、ひどく厳めしく、退っ引きならないような辞をもって、面会を申し入れた。
取次の寺僧はすぐ戻って来た。
「病間にて、取り散らしておりますが、おゆるしあるなれば、お通りくださいとの、半兵衛様のおことばでした。――何分、草廬もお手狭でございますから」
佐久間信盛は、
「苦しからず――」
と、頷いて見せながら、寺僧のあとに従いて行った。
離れの障子は閉まっている。しきりと咳の声がするのは、病褥にある半兵衛が、やむなき客のため、身を起しているからであろう。
信盛は、しばらく外に佇っていた。雪にでもなりそうな空もよいである。昼ながら南禅寺の山陰はしんしんと寒かった。
「どうぞ」
内から云って、小書院の障子をあけたのは附添いの家臣である。見れば病中の主も、その痩躯を畳へじかに置いて、
「ようこそ」
と、端居して出迎えている。
信盛はつかつか通って、辞儀が終ると、すぐ云い出した。
「昨年、君命として、それがしから達しておいた松寿丸を打ち首になすことは、もはや滞りなくおすましとは存ずるが、その後、確たるお答えのないため、信長公にもお不審をかけられておる。