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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,758 characters · 383 screens
火ぶた
ここを全軍の基点として、勝龍寺を後方の補給兵站基地とし、さらに西南方の淀から円明寺川の一線を扇なりに引いた。前衛各部隊をそれぞれ配し終った頃――夜はすでに明け近く、淀の長流もほのぼの所在を描き初めていた。
突然。
天王山の一面に烈しい銃声が谺し出した。陽はまだ昇らず、雲は暗く霧は深い。天正十年六月十三日。山崎街道にもまだ一馬のいななきすら聞えない時刻であった。
火ぶた
両軍が山崎に会して、この晨を、生の日か死の日かと期して相対峙したとき、秀吉から光秀へ「戦書」を送ったとも伝えられているが、果たして、そういう余裕があったかどうか。
また、そうした古法の陣押しによって、接戦の口火が切られたかどうか。
事実は。
光秀もまた御坊塚に着陣して間もない頃。また秀吉も、まだ後方の富田に在って、大坂から神戸信孝の来会あるを待っていた――十三日未明――まだ暗いうちに、期せずして、秀吉方の山之手隊と、明智軍の奇襲部隊とは、暁闇のうちに、もう激烈なこの日の序戦に入ったのである。
――今しがた。
天王山方面に聞えた烈しい銃声がそれである。夜来、折々湿っぽい小銃音の小ぜり合いはしていたが、このときのものは、