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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,758 characters · 383 screens
降りるやいな、大きく体の一方を動かす歩みを曳いて、無造作にそれへ来るなり二名の側へ坐った。
そしてすぐ恵瓊にむかい、
「実はもういちど西堂(恵瓊のこと)を煩わして、和睦するか手切れか、さいごの談判をなさいと彦右衛門どのへすすめたのは、かくいう官兵衛なんじゃ。どうなすった、やはりだめか。半夜中かかっても、折合のめどはおつきにならなかったのか」
煮え詰まったような二人のあいだに、官兵衛の磊落な語調はよほど気分を前へもどすのに効果があった。恵瓊も朝の光に面を少しあらためて、
「せっかくでしたが、どうも依然たるものでした」
と、笑った。
彦右衛門はそれを機に、
「今朝、信長公の御着陣について、堀どのと、なにかと打合わせをひかえておるので、失礼なれどちょっと中座をおゆるし下さい」
と、席を外してしまった。
官兵衛は呟くように、
「右大臣家のお着きも両三日と相成っておるので、和議のことも、きょう一日を除いてはもう二度と会見もなり難い。……ところで、どうです。よい程に取極めませんか」
彼の外交は単刀直入だった。またひどく高飛車だった。到底、勝目のない戦局に立ちながら条件についてとやかくいうならば、もう一戦のほかはないというような極言まで敢えてした。