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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,758 characters · 383 screens
水も静か。四山も静か。――漕ぎよせてくる検使舟の櫓の音のみが耳につく。
はるか西の岩崎山から、今日はこの辺りまで手にとるように望まれているだろう。そしてそこには毛利輝元、吉川元春、小早川隆景などが座をつらね、味方三万の将士も鳴りをひそめて、この一点に眸を凝らしているにちがいない。
さらに。――羽柴筑前守秀吉の本陣石井山は、もっと近々とここを俯瞰する位置にあった。その麓から堤上数十町にわたる陣々も馬印と旗で埋められていた。
宗治は遠く岩崎山のほうへ向って、心のうちでは多年の恩顧を謝し、なつかしの主家の旗を見ては、ひとみに惜別をこめていた。
「それへお渡りありしは、高松城の守将、清水宗治どのでございますか」
検使の舟は、すぐ側へ来た。こう呼びかけたのは、使者の堀尾茂助である。
宗治は、こなたの舟から、
「おことばの如く、長左衛門宗治でありまする。御和睦の一条を相果すべく腹を切りに参ってござる。御検使の役、御苦労にぞんずる」
と、一礼した。
「なお、申しあげたいお言伝もござれば、少々、お待ち候え」
茂助は、そういってから、扇子を上げて、宗治のうしろにいる難波七郎次郎へ、