Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens
と、受けた杯をふくみ、季節もよし、梅のにおう宵、久しぶり微酔の快を味わった。
「里人の口の端など、お気づかいは、御無用です」
と、尼は、銚子をすすめて云った。
「わたくしたち、禅家の者は、世間の口の端などには、いっこう頓着しておりません。あなたも、権勢に仕えず、白雲を友とする境界の画家でありながら、なぜそのようなこと仰せられますか」
「ははは。切りこんできましたな、禅尼どの。身の迷惑はかまわぬが、あなたの迷惑をふと思うたので」
「いえいえ。なんの迷惑も感じませぬ」
「しかし、この友松は、お尋ね者なのですぞ。御存じか」
「お尋ね者とは」
「おととし、山崎合戦のあとで、京の三条河原で、二度も首盗人があらわれました。一敗地にまみれた明智方の人々の首が、次々と、京都の河原にさらされましたろう」
「血ぐさい世の中は、久しく知りませぬ。風のたよりには、聞いていましたが」
「初めに、小栗栖の里で百姓たちに討たれた光秀どののさらし首が、一夜、何者かに盗み去られました。また幾日かおいて、明智衆の老将、斎藤内蔵助利三どののさらし首がまた失くなった。京の騒ぎはえらかったですよ。はははは」