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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens

Aozora Bunko

「敵か」

「そうとしか思えませぬ」

「……待て。敵だろうか。ほんとに」

秀次は、まだ、のん気だった。――よもや、とばかり考えるらしい。

だが木下勘解由、木下助右、山田平市郎、谷平助、芳野宮内などの旗本が、つづいて、駈け登って来るやいな、

「しまッた」

と、さけび合い、

「敵には、追いがかりの計があったと覚ゆるぞ。用意、用意ッ」

と、秀次の命を待ちきれずに、どよめき合った。

地鳴り、馬のいななき、将士の声々。

それが、草ほこりを立てて、一瞬に、兵糧時間の休息から戦うべき相に移るまでの間に――一方、東軍徳川方の部将、大須賀康高、岡川長盛などの追跡隊は、

「撃てッ、射よッ」

と、秀次隊のまん中へ、小銃と弓の一せい乱射を加え、

「よしっ、突っこめ」

敵の乱れをのぞんで、騎馬、槍隊が、どっと駈けこんだ。

これは右翼隊。――さらに左翼隊の榊原康政は、もっともっと敵部隊の末端にある大荷駄隊(輜重)へ、不意打ちを加えた。

荷駄隊には、足軽、軍夫、そして厄介物の重荷をつけた馬ばかりが多い。

奔馬は、その荷を振り落し、自軍の列を、駈けみだした。小荷駄頭の朝舎丹後は、よく指揮し、よく戦ったが、足手まといに煩わされ、