Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens
勝負果てなく格闘している個々の武者もある。
ついに、一方が一方の首を挙げ、
「取ッたあッ」
狂気したような大口をあいて、主隊の戦友のあとを追いかけてゆき、ふたたび黒い血けむりの中に姿を没するもあれば、追いつかぬうちに、流弾に中って、仆れ伏す影もある。
「やっ長追い無用ッ――。源左、源左、百右衛門。――止めろ。退けといえ」
何思ったか、秀政は、にわかに声をからして叫ぶ。
侍頭の柴田源左、名村百右衛門、長瀬小三次などが、
「退けや」
「御馬じるしの下にあつまれっ」
「出るな。もどれッ」
馬を駈けまわして、からくも味方の兵を収めた。
秀政は、馬を下り、道から崖の鼻へ歩いていた。そこに立つと、視界をさえぎるものがない。
じっと、遠くを見、
「ああ。早くも来たか」
と、つぶやいた。満面の血色を、醒めたようにあらため、見よ、といわぬばかりに、長瀬小三次、名村百右衛門らをかえりみた。
ここから西――朝陽と真反対な高地、ふじヶ根山の一端に、キラと、かがやくものがあった。
家康の陣標――金扇の馬じるしではないか。
堀久太郎秀政は、嘆声をあげた。
「残念ながら、あの大敵と出会っては、われら如きに策はない。