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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens
名を美しく、いさぎよく、そして、犬死にならぬ人間の死を、せめては、忠とよび、義とよび、信とよぶ、当時の道義にむすびつけて、仆るるも、頬に微笑を持とうと、希うのでもあった。
若き鬼武蔵――白皙の美丈夫、森長可の気もちなどがそれである。
かれの若い生命こそ、戦国の苦悶の象徴だった。
恥!
この一つが、かれをして、ふたたび平常の世間へ、生きて還ることを、思わせないのである。
それと、男の中の嫉妬。これもかれに、きょうの死装束を、よろわせた一因なのだ。
「家康に会わん」
かれは、誓っていた。
いよいよ乱軍となるや、武蔵守は、母衣武者四、五十人ばかりを、両わきにひきい、金扇の馬じるしを目がけて、
「家康に会おう。家康、見参っ――」
と、向うの山へ、駈け渡そうとした。
「やるな、やるなっ」
「鬼武蔵を」
「あの白地陣羽織の駿馬を――」
と、かれをさえぎる、甲冑の浪が、そのそばへ、寄っては蹴ちらされ、寄っては、血けむりにつつまれ、悽愴、ことばにも尽きる。
このとき、飛雨のように、白地きんらんの武者羽織を目標にあつまった銃弾の一つが、かれの眉間に中った。
面をつつんでいた武蔵守の白布が、ぱッと、紅になったせつな、