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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
姑は賢女だった。貧に暮した時を忘れず、傲りを警めて、かなり店が手広くなってからでも、窮乏した昔を忘れなかった。店員のために蚊帳を買わねばならなかったが、金の都合で古い古いものを買って来て、青い粉で蚊帳を染め、新らしいものらしく見せかけたが、古蚊帳も青く染ったかわりに、自分の手首もまっ青に染ってしまってなかなかおちなかったのを、それと見た若者たちが、わざと、どうしたのかと一々たずねて困らされた事などを、晩年になっても語りきかせていたということで、成功のかげには、こうした苦心もあるとの教訓も、華やかにくらしてきた、須磨子さんには、苦しいものであったろう。
ある人が、彼女の花の盛りから今日まで、親しく交わっての感慨に、彼女の美は衰えを知らぬのに、それにくらべて自分が男子として、碌々と日を過して来たと嘆息して、
「七人の子をもてば大概の女の容色は萎むものなのに、あの人は頸にも、耳の下のあたりにさえ、衰えをも見せていない」
と言った。また、やはり昔から、久しく知っている人が、
「先日向うから自動車が来たので、ふと見ると、美しい人が乗っている。大橋令嬢かしらと思って近づくとお母さんだった。