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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
彼女は四人の子供を抱えて、そうした夫につかえるために貧苦をなめつくした。ある時は行商となり、ある時は車をおしてものを商い、ある時は夫の郷里にゆく旅費がなくて、門附けをしながら三味線をひいて歩いたこともあった。晩年にやや志望を遂げるようになっても、すこしも心の紐はゆるめず、朝鮮に、支那に、出征兵士をねぎらって、肺患の重るのを知りながら、薬瓶をさげて往来していた。
五
高橋おでんも、蝮のお政も、偶々悪い素質をうけて生れて来たが、彼女たちもまた美人であった。おでんもお政も悪が嵩じて、盗みから人殺しまでする羽目になった。それにくらべては、花井お梅は思いがけなく人を殺してしまったので、獄裡に長くつながれたとはいえ、それを囚人あつかいにし、出獄してから後も、囚人であった事を売物見世物のようにして、舞台にさらしたり、寄席に出したりしたのはあんまり無惨すぎる。社会は冷酷すぎる。彼女は新橋で売れた芸者であったが、日本橋区の浜町河岸に「酔月」という料理店をだした。そうした家業には不似合な、あんまり堅気な父親をもっていて、恋には一本気な彼女を抑圧しすぎた。