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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
あの謹厳な、故山県老公もまた若くて、鎗踊りをおどったとさえ言伝えられる、明治十七、八年ごろの鹿鳴館時代は、欧風心酔の急進党が長夜の宴を張って、男女交際に没頭したおりであった。洋行がえりの式部官戸田子爵夫人極子が、きわめて豊麗な美女で、故伊藤公が魅惑を感じて物議をひきおこしたとの噂もあった。岩倉公爵夫人――東伏見宮大妃周子殿下の母君も、殿下が今もなおお美しいがごとく清らかな女だった。大隈侯夫人綾子も老いての後も麗々しかったように美しかった。その中にも故村雲尼公は端麗なる御容姿が、どれほど信徒の信仰心を深めさせたか知れなかった。
富貴楼お倉、有明楼おきく、金瓶楼今紫は明治の初期の美女代表で、あわせて情史を綴っている。お倉は新宿の遊女、今紫は大籬の花魁、男舞で名をあげ、吉原太夫の最後の嬌名をとどめたが、娼妓解放令と同時廃業し、その後、薬師錦織某と同棲し、壮士芝居勃興のころ女優となったりして、男舞いを売物に地方を廻っていたが、終りはあまり知れなかった。お倉は妓籍にあるころよりも、横浜開港に目をつけて、夫と共に横浜に富貴楼の名を高め、晩年も要路の人々の仲にたって、多くの養女をそれぞれの顕官に呈して、時世の機微を覗い知っていた。