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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
明治四十五年に、故人の日記が公表にされてからである。私は今更、夢の多かった生活、いつも居眠りをしていたような自分を恥じもするが――幾度かその日記を繙きかけては止めてしまった。愛読しなかったというよりは、実は通読することすら厭なのであった。それは私の、衰弱しきった神経が厭ったのであったが、あの日記には美と夢とがあまりすくなくて、あんまり息苦しいほどの、切羽詰った生活が露骨に示されているのを、私は何となく、胸倉をとられ、締めつけられるような切なさに堪えられぬといった気持ちがして、そのため読む気になれなかった。
しかし、今はどうかというに、私も年齢を加えている。そして、様々のことから、心の目を、少しずつ開かれ風流や趣味に逃げて、そこから判断したことの錯誤をさとるようになった。この折こそと思って、私は長くそのままにしておいた一葉女史の日記を読むことにした。すこしでも親しみを持ちたいと思いながら――
で、お前はどう思ったか?
と誰かにたずねてもらいたいと思う。何故ならば、私はせまい見解を持ったおりに、よくこの日記を読まないでおいたと思ったことだった。拗くれた先入観があっては、私はこの故人を、こう彷彿と思い浮べることは出来なかったであろう。