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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,076 characters · 256 screens
にならなかったことがしれ、かえって妹たちの方が苦しいなかからその急を救った。
「家の方は私の稽古着を売ってもよいから」といって、親子の膏であり、血となる代の金四円を、母を車に乗せて夜中ではあれど届けさせた。
ある時は貧に倦じた老女の繰言とはいえ、
「あな侘し、今五年さきに失なば、父君おはしますほどに失なば、かゝる憂き、よも見ざらましを我一人残りとゞまりたるこそかへす/″\口をしけれ、我詞を用ひず、世の人はたゞ我れをぞ笑ひ指さすめる、邦も夏もおだやかにすなほに我やらむといふ処、虎之助がやらむといふ処にだにしたがはゞ何条ことかはあらむ、いかに心をつくりたりとて手を尽したりとて甲斐なき女の何事をかなし得らるべき、あないやいやかかる世を見るも否也」
と朝夕に母に掻くどかれては、どれほどに心苦しかったであろう。おなじ年(廿六年四月十三日の記に)、
母君更るまでいさめたまふ事多し、不幸の子にならじとはつねの願ひながら、折ふし御心にかなひ難きふしの有こそかなし。
とあるに知る事が出来る。
朝には買出しの包みを背負って、駄菓子問屋の者たちから「姐さん」とよばれ、午後には貴紳の令嬢たちと膝を交えて「夏子の君」