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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,172 characters · 277 screens
」
と錦子が色に不服をいうと、孝子が「花見立」というのから、
「桃よ、美妙斎は桃よ、紅葉は桜見立よ。」
と選りだした。
三
錦子は出京してから、一ツ橋の学校にも近いので、神田猿楽町の親戚の家に泊っていた。
小さい家ではあったが、黒塀の中から、深張りの洋傘をさしたりして、錦子が出てくると、附近には法律学校や医学校の書生が多かったので、目をひいた。
駿河台の山田の家とはいくらも距離がなかったから、自然と足近くなっていった。美妙は文学者の話をよくしてくれた。そのうちに、手を入れてやった錦子の小説を、発表してくれるとも言った。
駿河台の東紅梅町には、尼古来教会が落成して間もなかった。あんな高台へ、あんな高い建築を許して勿体なくも皇居のお屋根まで見えると、憤慨するものもあったほど巍然とした、石の壁と、銅瓦の、塔の屋根は尖っているが円く、妙致を極めたものだった。
「昔だと、南蛮寺とでも、いったのでしょうね。これがニコライ寺さ。露西亜の国教です。日本へ伝道に来た坊さんの名をとって呼んでるけれど、ほんとは、基督復活聖堂というのですと。」
と、広壮な、寺院の廻りを、並んで歩きながら、美妙斎は、鐘楼の高さを、百二十五尺あるのだと語りながら、