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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Read 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) by 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,172 characters · 277 screens
」
そんなようにもいわれた。一葉は、あの細っこい体で、一文菓子の仕入れにも行くのだそうだが、客好きで、眉山などから聞くと不断は無口だが、文学談になると姐御のようになる。そうすると、青い顔の頬の上が真赤になって、顔が綺麗になるということだ。浅草の、大音寺前という吉原に近いところで荒物店を出すとかいうから、そのうちに吉原を素見しながら、あの辺を通って見ようといったりして、
「そんな生計も、書くための、命をささえる代なのだろう。」
と、それは、思いやりのある暗い眼つきをしたが――ああ、やっぱり、競べものにはならないのだ。好い気になって、のんきな気持ちで聴いていたが――
(じゃあ、あたしは、何を目的に、一生懸命になったら好いのだ。)
自問自答すると、(恋愛)という答えしか出なかった。そしてまた、その目標は美妙斎だと思わないわけにはいかなかった。
錦子が神保町へおりてくると、広い間口をもった宿屋の表二階一ぱいに、書生たちが重なって町を見おろしていた。この附近は下宿屋が門並といっていいほどあって、手すりに手拭がどっさりぶらさがっていたり、寝具を干してある時もあるが、夕方などは、書生の顔が鈴なりになっているのだった。