Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
『しんやくげんじものがたり』しょはんのじょ
『新訳源氏物語』初版の序
上田 敏
Read 『新訳源氏物語』初版の序 (『しんやくげんじものがたり』しょはんのじょ) by 上田 敏 (うえだびん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,387 characters · 5 screens
源氏物語の現代口語訳が、与謝野夫人の筆に成って出版されると聞いた時、予はまずこの業が、いかにもこれにふさわしい人を得たことを祝した。適当の時期に、適当の人が、この興味あってしかも容易からぬ事業を大成したのは、文壇の一快事だと思う。それにつけても、むらむらと起るのは好奇心である。あのたおやかな古文の妙、たとえば真名盤の香をいたようなのが、現代のきびきびした物言に移されたとき、どんな珍しい匂が生じるだろう。瑰の芳烈なる薫か、ヘリオトロウプの艶に仇めいた移香かと想像してみると、昔読んだままのあの物語の記憶から、処々の忘れ難い句が、念頭に浮ぶ。
「野分だちて、にはかにはだ寒き夕暮の程は、常よりも、おぼし出づること多くて」という桐壺の帝の愁より始め、「つれづれと降り暮して、肅やかなる宵の雨に」大殿油近くの、面白い会話「臨時の祭の調楽に、夜更けて、いみじう霰ふる夜」の風流、「入りかたの日影さやかにさしたるに、楽の声まさり、物の面白き」舞踏の庭、「秋の夜のあはれには、多くたち優る」有明月夜、「三昧堂近くて、鐘の声、松の風に響き」わたる磯山陰の景色が思い出され、「隠れなき御匂ひぞ風に従ひて、主知らぬかと驚く寝覚の家々ぞありける」