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にほんのにわ
日本の庭
室生 犀星
Read 日本の庭 (にほんのにわ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,450 characters · 5 screens
竜安寺石庭の築地の塀があれらの虎の子渡しの石を抱いているのも、築地の塀が利かなかったら、石庭の輪郭と緊張が失われるように思える。市井の庭なら生垣にさまざまな四季の花時を見込んで、生垣仕立にすれば垣根だけで結構見られるのである。小さい庭に雑然と木を植え込んだ庭ほど緊張を失った生活を髣髴せしめるものはない、庭は日本の身だしなみであり、あそこにこそ、小さく貧しい庭であっても、日本の肌身がある。庭をつくるということは贅沢ではなく、生きた父とか母とかの歴史が、すぐ茶の間から見えるという、そんな親しさを身近に感じるとすれば、石一つ鳳仙花一本でも、その家の歴史を物語ってくれるものである。
すこし凝った庭なら築地の塀だけを見ていてもいい、瓦と土の塀を見ていれば、雑庭風な妄念を去ることができる。しかしここまで行くには、人は死に近づいていることが意味される。人はその生涯において派手な庭をつくり、そしてやがて瓦と土とを終日見ていて、もはや石や灯籠も、花も見なくなったといえば、やっと一人前の庭つくりになったといえよう。庭も何も持っていない人で、いつも庭を頭でつくっているような人がいたら、その人は最後に垣根と土とを見ていて十分に満足するかも知れぬ。