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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Read 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) by 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,306 characters · 300 screens
すると、
「そんな自分のことを何も他人にいわなくたって好いじゃあないか」
お宮は人を馬鹿にしたようなことをいった。
私はたちまちかあっとなった。先だっても誰れだったか、柳沢さんという人は自己に寛にして他人に厳なる人だといっていた。全くその通りだ。またこのお宮がその通りの奴だ。昨夜から自分で勝手なことをいいながら、さもさも私がよくないようなことをいっている。そう思うと私は、カッとお宮の横着そうな面に唾を吐きかけて、横素頬を三つ四つ張り飛ばして、そのまま思いきろうと咽喉まで出しかけた痰唾をぐっと押えてまた呑み込み、いやいや今ここでお宮を怒らして喧嘩別れにしてしまうとこれまでお宮にやっている手紙を取り戻すことが出来ない。先だっても柳沢の言っていたことに、真野がある女にやった手紙を水野がその女から取り上げて人に見せていた。他の男が女にやった手紙を女から取り上げて見るのは面白い。水野は腕がある。
そういって、柳沢自身もそんなことをして見たそうにいっていた。私がもしお宮を怒らしてしまうと不貞腐れのお宮のことだから、きっと柳沢に私のことを何とかかとかいうに違いない。