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あゆむ
日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)
戸田 豊子
Read 日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三) (あゆむ) by 戸田 豊子 (とだとよこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,183 characters · 44 screens
鋳物工場
一
一
町外れの原っぱと玉川を区切る土堤の横が赤煉瓦の松金鋳物工場である。
土堤の上を時々陽気なスピードでトラックが走った。肥桶や青物を積み上げた牛車が通った。白い埃がまき上った。
土堤を降りた向側は山大に松倉、鋳物工場らしく、ハンマーの音が高らかに響き、エンジンが陽気に嘯く。松金の赤煉瓦だけが死骸の様に沈まり返っていた。髪毛一すじ程の煙りも吹き上げない。
鉄管やトロッコ、レール等の既成、未成品を乱雑に投げ出した、工場内外を、警備の巡査が四五人、教練の歩調で往復した。
「松金争議団バンザーイ!」
時々、土堤のトラックが皮肉な喚声を浴びせて通った。工場裏の争議団本部は組合旗を幾本も突っ立て、トテツもない気勢を揚げていた。
「おい、甲羅を干して来よう!」
そう言って、ぞろぞろ土堤へ這い上り、腕を振り咽喉を膨らまし、労働歌や革命歌を爆発させた。日に五六遍は土堤へ押しかけた。
――資本家やっつけろ!
――ブルジョア倒せ!
――労働者武装せよ――、
眼鏡をかけた上原と、赭ら顔の杉が顔見合せて苦笑した。彼等は佩剣を抑えて建物の陰へおりた。頑固で何につけても融通のきかない石田老巡査だけが、この示威にまともにさらされていた。