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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Read 日本婦道記 (にほんふどうき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,829 characters · 25 screens

Aozora Bunko

とふりかえった。

「その戸を閉めて、ここへ来てかけよう」

自分からさきに藁束を置きなおして腰をかけ、伊緒にも席を与えた。低い天井から吊ってある燈皿のあかりが、じいじいと音をたてながら、ふたりの上からやわらかい光をなげていた。

「おまえも聞いたであろう」

と伝四郎は低いこえで話しだした、「肥前のくに天草に暴徒が乱をおこし、内膳正(板倉重昌)さま、将監(石谷十蔵)さまが征討軍の大将として出陣なすった、それはさる十日のことだったが、このたび総督として松平伊豆守(信綱)さまとわれらがご主君(戸田氏銕)のおふた方が御発向ときまった。今日そのお使者が江戸おもてから到着し、すぐに陣ぞろえがあったのだ」

「そのお供をあそばすのでございますね」

伊緒はやっぱり予感が当ったと思い、われ知らず声をはずませた。伝四郎はうなずいて、

「番がしらの格別のおはからいで、留守にまわるべきところをお供がかなった、世が泰平となり、もはや望みなしと思っていた晴れの戦場へ出られる、さむらいとしての冥加は申すまでもない、おれは身命を棄てて存分にはたらくつもりだ、そしてもし武運にめぐまれ万一にも凱陣することができたなら、必ず和地の家名をあげ、おまえにもいくらかましな世を見せてやれると思う。