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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

Read 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 192,678 characters · 394 screens

Aozora Bunko

※(ローマ数字5、1-13-25)

お高の頬はつやつやしていた。お高の眼は物置と庖厨の間になった出入口へ往っていた。と、十七八の色の白い小生意気に見える小厮が土蔵の鍵を持って来た。

「早くいらっしゃいよ、なにをまごまごしてるの」

小厮はすました顔をしていた。

「鍵が見つからなかったものだから」

「鍵が見つからないなんて、平生の処に置いてあるじゃないの」

※(ローマ数字5、1-13-25)

土蔵は三戸前ともに古かった。土蔵の入口にはそれぞれ厚ぼったい土戸が締っていた。小厮の平吉はその戸の錠口へ鍵を入れて錠を放したが、重いので手ぎわよく啓けることができなかった。

「弱虫ね、このひとは」

「だって、なかなか、この戸は、ね」

「男の癖に、そんな戸が重いなんて、だめだよ」

お高の詞はひどくはすっぱであった。

「だって、この戸は、なかなか千人力でないと、あかねえのです」

戸はやっと啓いた。戸は二重戸になっていて土戸の次には金網戸があった。

「だめだよ、口端できいたふうな事を云ったって、からっきしだめじゃないか、しっかりおしよ」

「へッ」

平吉はとぼけるように云って金網戸の錠を啓けた。金網戸は錠前も軽ければ戸も軽かった。